第一章

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注射器の半分まで入れたところで、椿の身体に異変が起きた。 「―――‥!!!!」 ドクンッと身体が大きく脈打った。 椿は驚き目を見開く。しかし、つい先程まで見えていた病室の天井も、周りでバタバタと走り回る看護士の姿も、八神の顔も見えなかった。 辺り一面真っ白い光で覆われていて、まるで目の前で蛍光灯の光を見ているようだった。 しかも、耳にも異常があることに気付いた。ブンブンと耳元で蜂が羽ばたいているような音がする。その音のせいで他の音が聞こえない。 ―‥何が起こったの!?なんで何も見えないの!!?この音は何!? 椿は視覚、聴覚が奪われたショックからパニック状態に陥った。 身体も動かない。 目も見えない。 耳も聞こえない。 自分の身体がどうなっているのか全くわからない。 ―‥嫌だ!気持ち悪い! 今度はグルグルと目がまわっているような感覚を覚え、ぎゅっと目を瞑った。 もう、今の苦しさに耐える体力は椿には残っていなかった。 元々、この一年間寝たきりの生活だったために体力など殆どないに等しい。 ―‥八神先生、お父さん、お母さん‥。ごめんね。 椿は静かに意識を手放した‥。
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