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電車が到着して、降りていく人たちを見送る。
そして待っていた数人の人たちが電車の中に乗り込んで行く。
茉帆もその中の一人で、普通に乗り込んだ。
―次はー、○△駅、○△駅…‥
イヤホンを片方だけ耳に入れながら、そんなアナウンスを聞く。
…またいつものように。
その手は茉帆に触れてきた。
最初は気持ち悪いって思っていた。
でも、どうしていいか分からないうちにどうでもよくなってしまった。
このおっさんは、どういう心境であたしに触ってるんだろう。
そんなことをいつも考えながら時が過ぎるのを待つ。
…今日も怠いな、学校。
毎日の生活を思うと家へ引き返したくなる。
怠いと思いながらも茉帆が学校へ行っているのは行く場所がないから。
ただ、それだけ。
街をふらついて警察に補導されるのもめんどうだった。
早く降りてってくれないかな。
再び、意識はさっきから自分に触れているおっさんへと戻る。
嫌がったりはしないが、こんなことをされていて気持ちの良いものではない。
不快。
再びアナウンスが聞こえてくる。
…あと三駅か。
「……?」
あと三駅。
まだ不快な思いをしていたはず。
それが、急に茉帆に触れていた手がなくなった。
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