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触られないのは良いことなんだけど。
疑問に思い、茉帆は振り返ってみた。
「………」
制服を着崩した男の子が、おっさんの右手を掴んで持ち上げていた。
驚いて、声も出さずにそのまま様子を見る。
「おっさん。俺の女に触んないでくれる?」
笑顔でその男の子は言っているんだが、声が冷たいところが怖い。
…ん?俺の女って言った?
助けてくれている男の子とおっさんを眺めながら、他人事のように思う。
感情を捨てた茉帆は、冷めている。
「ほらっ行くぞ」
次の駅に着いたかと思うと、男の子は今度は茉帆の腕を掴んで電車を飛び降りた。
いつも降りる駅はまだ先なんだけど…。
とか思いながらも、引っ張られるがままについていく。
改札を通り抜けてしばらく走り、人の少ない公園へと来た。
ベンチにどかっと座る男の子を見て、茉帆も離れて座る。
「……」
ちらっと横目に男の子を見てはあ、とため息をつく。
見知らぬ男の子と見知らぬ土地に来てしまった。
正しく言うなら、無理矢理連れてこられた。
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