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帰りたくても道に迷いそうだ。
仕方なく、ベンチに座っておとなしくしている。
「お前さぁ…」
今まで黙っていた強引な男の子が声を出す。
急でびっくりしたけど、男の子を見もせずに耳だけかたむける。
「いつもされてない?拒否しないわけ?」
初対面なのに、馴れ馴れしい奴。
そう思った。
…いつも、ってあたしのこと知ってたのか。
茉帆自身は全くこの男の子を見たことがなかった。
「…別に」
どこからかチャイムが聞こえてくる。
静まりかえった公園にその音は響きわたっていた。
学校、始まっちゃったよ。
素っ気なく答えながらそんなことを思う。
行きたくもなかったからどうでも良いけど。
「へえ…」
つぶやくようなそんな声が聞こえてきたかと思うと、男の子が顔を近づけてきた。
自然と目をそらしてぽたぽたと、水道から落ちる水滴に視線を落とす。
近い…。
一瞬だけちらっと男の子を見て、顔を遠ざけようとした。
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