文化祭

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三桁の暗証番号をダイヤルに合わせて鍵をはずす。 誰もいないことを確認してから外へ出て、思いっきりのびをした。 屋上へ、一般の生徒は出ることができないようになっている。 そのため、屋上へと続く階段は使わないようにロープが張ってあり、ドアにもダイヤル式の鍵がついていた。 茉帆が中に入れるのは卒業した、仲の良かった先輩に教えてもらったから。 「…はあ」 フェンスにもたれ、校庭の様子を見てみる。 教室や廊下と変わらず、忙しく準備を進める生徒たちでにぎわっていた。 なんでだろ。 今さら、なんで。 さっきの出来事に、疑問しか浮かんでこない茉帆。 なぜ、今になって自分に声をかけてきたのか。 松本のことがよく分からない。 しばらく校庭の様子をぼーっと眺めてから、思い出したように歩き出す。 屋上の端の方にある倉庫の横の、わずかな隙間。 テントのようなものが畳んで、そこには立てかけてあるが、それをどかして倉庫の裏側へと抜けることができる。 そこは茉帆のお気に入りの場所だった。 学校内で唯一の。 あー、落ちつく。 三つ葉の咲くあたりを横目に、茉帆は寝転んだ。 倉庫の裏側にある、この秘密の場所は不思議だった。
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