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茉帆はそれを聞いて嬉しくなった。
初めて友達が出来たような、そんな気持ち。
「うん。沙夜っ」
今度は作り笑いでも何でもない、本当の笑顔で沙夜のことを見た。
「茉帆って、あたしも呼ぶから」
「うん」
それからしばらく、少し会話をしては途絶えて、また少し会話しては黙り込んで、というのを繰り返しながら時間が過ぎた。
沙夜はのんびりとお昼を食べ、茉帆は寝転んで空を眺めていた。
そんな時間も気まずいとかそういうものはなく、居心地の良いものだった。
「ねえ」
「なに?」
沙夜が声をかける。
寝転んだまま顔だけを沙夜の方へ向けた。
「これ…、味見してくれない?」
そう言って沙夜が茉帆に渡したのは唐揚げだった。
見た目は普通。
…少しだけ黒っぽく焦げていたが。
「食べていいの?」
その問いに沙夜が頷いたので、茉帆は起き上がって唐揚げを手にとると、口へ運ぶ。
そんな様子を沙夜は不安そうに見つめていた。
「おいしい」
と、笑顔でそれだけ言う。
「本当に?」
「うん」
大きく茉帆はうなずく。
それを見て沙夜はほっと胸をなでおろしていた。
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