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急に、携帯の着信音が鳴り響いた。
慌てた様子で沙夜が電話に出る。
「もしもし」
『沙夜ー。どこにいるの?早く戻ってきなよー』
電話の向こうの声が、茉帆にまで聞こえてくる。
明るく、元気な声の女の子だ。
『水野くんがさー‥、あー、うっせ。廉、竹村黙らせろっ!』
「……」
女の子の声から男の子の声に変わる。
電話の向こうのやり取りをただ、聞いているだけで沙夜は言葉を発しない。
というより、喋るタイミングがないように思える。
苦笑いで茉帆は沙夜のことを見ていた。
沙夜は呆れたように肩をすくめるが、楽しそうだった。
「…もしもし?」
会話が終わりそうにないので、沙夜は呼びかける。
『沙夜?あー、とりあえず教室に戻ってこい。じゃ』
ツーツーという電話の切れた音。
最後の声は男の子だった。
結局、電話で沙夜は「もしもし」としか言っていない。
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