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携帯をしまうと、沙夜はお弁当を片付け始める。
「楽しそうだったね。友達?」
そう言ってから茉帆は少し後悔する。
改めて、自分は独りなんだなということを実感してしまった。
電話の先にいた人たちが待っているであろう教室に、戻っていける沙夜がうらやましかった。
「うん。大切な人たち」
はにかんだような笑みを見せて言うと、沙夜は立ち上がる。
寂しさを感じ、茉帆は何も言えなくなった。
自分の腕の複数の切り傷を見ても一切恐れる様子もなく、普通の友達のように接してくれた沙夜が、やはり遠くの存在だったんだと思ってしまう。
「楽しいのは今だけ。しばらくしたらこんな生活、送れなくなるから」
一瞬、悲しそうな表情を見せたと思ったのは気のせいだろうか。
それでも覚悟を決めたような、堂々としている姿だった。
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