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高校に入学してすぐ、多いとは言えないけれど親しい友達も出来て、あたしは楽しい高校生活を送っていた。
あのときはあたしだって、“普通”の女子高生でいられた。
そんな生活が変わってしまったのは二年に進学し、数週間経ったときのこと。
「…御影」
夕暮れ。遅くなってしまったから、帰ろうとしていたときだった。
もう誰もいないと思っていた。
後ろから声をかけられて少し驚く。
「松本。
こんな時間までどーしたの?」
松本 晴希。
一年の時にクラスが同じで席が近いことが多く、一番よく話した男子だった。
二年になって、クラスも離れて会うことが減っていて。
だから、松本の顔を見て懐かしいと思う。
「お前こそ何してたんだよ」
「少し、ぼーっとしてたの」
ロッカーから取り出したノートを持ち、松本の顔をじっと見た。
暗い廊下に窓から差し込むオレンジ色の光で、包まれているような松本がなんだかかっこよく見えた。
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