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誰もいなくなった空き地に
いつもの静けさが戻った
【ククク…】
そんな場所に冷たい笑い声が響く
‐見ぃつけた…‐
宙に浮かび上がる黒い影
その中から1人の男が現れた
勿論人間ではない
無駄に背が高く見た目は人間の様だが、その雰囲気は人のものではない
そして
響き渡る低い声
【ククッ…】
いいもの見ちゃったなァ
こんな所で
こんなに早く
出会えるなんてねェ
白夜叉…
銀色の髪
白い肌
紅い瞳
戦争ん時と変わらないな
いや、少し髪が短くなったか?
だが
あの並々ならぬ勘の良さ
瞬時に己が剣を構えるあの動き
あの時と同じ
糸の様な細く強い殺気
忘れもしないさ
いや
忘れることなどできない
しかし驚いたよ
白夜叉の正体が
屍を食らう鬼
だったなんてねェ
屍を食らう鬼は
死んだと聞いていたし
鬼と呼ばれていたくらいだ
てっきり
俺と同じ天人だと思っていたんだが…
偶然耳にした噂で分かったよ
どこかの村人が話していた噂でね
…………………………
……………………
………………
「昔この村に鬼がいたろ?」
1人の男が言った「さァ…俺ァまだ餓鬼だったからよく覚えてねェな」
「実は俺もよく覚えてねェんだけどさ。オヤジが言ってたんだよ…その鬼は、銀色の髪に血のような紅い瞳をしていて村に数々の災いを齎してたって…」
「…でももう死んでんだろ?」
「いやそれがさァ…」
「江戸でそれらしき奴を見た奴がいるらしいんだ…」
その鬼の特徴が
俺の探している白夜叉と同じだということに気がついた
そこですぐ江戸へ来てみれば
こんなに早く見つかるなんてねェ
鬼の正体が
白夜叉だったとは…
予想外だよ
…いいことを思いついた
奴に1人で挑むには
余りにも危険すぎる
だが…
奴は白夜叉と鬼としての
重い罪を感じている
それを使えば簡単に…
【クククッ…】
おもしろくなりそうだ…
暫くの間
空き地に不気味な笑い声が響いていたことは
誰も知らない
†
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