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「…たっきぃ?」
「!」
菜那の声にハッとして、空流先輩が入っていった食堂の入口から目を逸らした。
「…なんでもない」
この悩み事は結構重大みたいだ。自分でそう自覚した。
「…他の男見てたの?」
低い声が下から聞こえた。見ると、彩貴先輩が私に抱きつきながらもきつくこっちを睨んでいる。…とても怖い。
「男性は恋愛対象外です」
「ふんっ」
先輩は怒ったのだろうか、1人で食堂の中へと入っていってしまった。本当に女の子みたいな方だな。
「やっと行ったね」
「うん~」
若干呆れ気味の亮汰と菜那。紀和は亮汰にもたれかかって立ち寝をしていた。
「たっきぃ大丈夫?こんな言い方は悪いと思うけどぉ…あの人にしつこくされてさぁ」
「大丈夫。いつも食べるの遅くなっちゃってごめん」
私が謝ると紀和が急に目を覚まし、私の頭をグシャッと撫でた。
「お前が謝ることじゃない」
ボソッとそう言うと、そのまま食堂へ入って行ってしまった。そのあとを菜那が慌てて追う。
また紀和の優しさに触れた…のかな?
私はぐしゃぐしゃになった自分の頭を軽く触った。
「なんかあったら俺らに言いなよ?何でも聞くからさ」
お前ら待てよ~、と言いながら亮汰も食堂に入っていった。
……本当、私はなんて良い友達を持ったんだろう。
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