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「ひッ!」
樹元は怯えたようにそう呟くだけで身体は恐怖で動かないようだ。
(くそッ! 止まれェェェェ!)
那月は空中で自身の身体を捻って回転させた。
そして僅か、ほんの僅かに武器の軌道をずらしていく。
螺旋回転させた砲弾のように那月は弧を描いて樹元の横を抜けた。
武器の先端は髪を少し斬って樹元の頬を僅かに掠めた。
那月はティアを護るように抱き抱えた。
「……ぐあっ!!」
そのまま那月は地面に倒れて廊下を転がる。
黒い鎌は投げ出されてカランカランという軽い音を立てて床を滑って砕け散った。
それだけである。
他には何も起きてはいない。
「はッ……はッ……」
樹元は恐怖から放たれ、ようやく地面にペタンと座ることが出来た。
「痛ッッ! 大丈夫か? ティア」
「私は大丈夫です。那月さんは?」
大丈夫だ、と那月は言いながら樹元を見ると、
「お前も大丈夫か?」
心配するように床に座った樹元に駆け寄った。
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