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「何で? 何でアタシの心配までするの!? アタシは敵なのよ!」
「違う」
那月は樹元の主張を否定すると、続けて、
「お前は教師にティアを捕まえろって頼まれただけだろ?」
那月がそれを言うと樹元は首を横に振って、
「違うの。アタシはアンタを奴隷にしたかっただけ……アタシだけの奴隷に」
「……奴隷?」
那月は苦笑いで樹元を見るとすでに泣き出しそうな樹元を見て溜め息をつく。
そして樹元の頭を軽く拳骨で叩き、呆れたような表情で、
「奴隷じゃなくて友達なら大歓迎だ。なぁ? ティア」
「はい!」
ティアの元気な声を聞くと那月は笑って、
「だから、もうそんな頼みなんて聞かなくて良いんだよ……じゃあな」
それだけ言うと那月はティアを連れて玄関へと向かった。
「友達……」
樹元は少し前のことを思い出していた。
入学手続きの時に見た彼の横顔。
そして昨日になってその姿を見つけた時の気持ち。
「……ッ! 何、思い出に浸ってんのかしら」
樹元は頭をブンブンと振って一言。
「……馬鹿」
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