第三章 教師の苦悩

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那月とティアは、制服に着替えてマンションの一室を出ると、鍵を閉めた。 「ったく、稲崎の言うことを鵜呑みにするって……無謀にも程がある」 「良い人だと思うのですけどね」 そんな他愛のない会話を交わしながら那月とティアは階段を降っていく。 那月は、大概の学生が持つ気怠そうなオーラを身に纏っている。 対してティアは、ごく一部の学生しか持たないような優等生的なオーラを纏う。 この辺の違いは恐らく経験の差ではないかと那月は思う。 階段を降ってマンションを出ると、そこに稲崎が待機していた。 (あいつ、呑気に手を振っているな。朝はちょっとした騒動になったってのに……全てお前のせいだ。覚悟しろっ! 貴様を裸エプロンで吊し上げてやる!) 「おはよう! ティアさん、今日も何て美しい」 稲崎は瞬間的にティアの前に膝を付いた状態で現れ、ティアの小さい手を取った。 「う、美しいって……」 ティアは慣れていないのか、ポッ、と頬を赤くして稲崎から目を背ける。
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