第三章 教師の苦悩

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以前、戦った雷の魔法を持つ暮南という者の攻撃は、威力に関係なく問答無用で相殺させた。 にも関わらず、樹元の那月に放った炎は打ち消してしまった。 (属性で優劣でも存在するのか?) その考えに至った那月は今日の授業の内容を思い出した。 (確か今日は属性についての授業があるんだった。もしかしたら何か分かるかも知れない) そんなことを難しい表情で考えていた那月の袖を隣にいたティアの細い指先が摘んだ。 「何だ?」 「昨日のことを考えているのですよね?」 ティアは、こういう時には鋭い、と那月は肩を竦めた。 そんなことを思っているとティアは続けて、 「那月さんは、自分の能力についてどれだけ知っているのですか?」 「全く知らないなー」 そんな那月の即答を聞くとティアは一瞬、目を細めて黙ってしまった。 「ティア?」 「那月さん。信じても……良いですよね?」 「……?」 この時、那月にはティアが言ったこの質問の意味が分からなかった。
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