漆黒の序章

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その布の中には一人の子供。 まだ産まれて間もないような赤子だ。 「…………」 しかし、その赤子の左目はえぐるように無くなっていた。 「汝のようなクラス9の有能な魔女にも治せぬか……」 ダオ・ケータルと呼ばれてる存在の声が響いた。 魔女エリーゼは雨に濡れた顔で頷く。 実際、濡れている理由はそれだけではない。 「…………アルタイルの息子……か。 良いだろう。 予がこの赤子救ってやる」 その大きな金色の目の輝きが一層増す。 「心配しなくて良い。 予がこの赤子を育てよう。 汝は早くこの戦争を終結させてこい」 エリーゼの手から赤子が離れる。 赤子はそのまま、大きな存在の方へと浮き上がった。 「ぅ………」 彼女は口惜しいように噛み締める。 しかし、すぐに向き直った。 「お願いいたします。 ………必ずやこのエリーゼがアルタイルと共にこの戦争を終わらしてみせます」 一人の魔女は踵〔きびす〕を返し、魔法を唱えた。 浮き上がり、洞窟の外へと飛び出す。 外の雨は力を増し激しくなっている。 遠くに見える火の海。 一つの妖艶な漆黒が雷の鳴り響く空へと雨を切り裂いていった。
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