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「おあがり。こっち来ぃ」
そう言いながら、少女は日陰と日向との境から奥へ下がった。くっきりと明るさの分かれた線の向こうから、しろい手がおいでおいでをしている。
僕は言われるまま、くつを脱いで縁側に上がった。少女はさらに奥の、畳の上にいる。少女の近くに行くには、体全部を陰の内側に入れなければいけない。
それ以上行ったらだめだ。と、心のどこか深いところから聞こえたような気がした。けれども僕は、少女の手招きに逆らえなかった。
むき出しのひざに、畳のちくちくする感触を感じる。僕はひざで歩いて、少女のそばまで行った。もう爪先すら日の当たるところに出ていない。木の葉の散らかす光も届かない。
少女が正座しているので、僕はその横に同じように正座した。
「おいでやす」
満足したように手招きをやめた少女は、僕に向き直った。両手を胸の前に持ち上げ、そっと僕に手を伸ばし――――
抱きしめるように肩をつかんで僕を押し倒した。
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