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(義姉)
「わかった。本人と話してみる…。絶対馬鹿な事しちゃダメだからね」
(俺)
「本当に申し訳ありません…」
目を潤わせながら電話を切り、場所を近くの公園に移した。
車から降り、ベンチに腰掛け、目の前の水たまりにぼんやり目を向ける。
空を見上げると、満天の星空が広がっていた。濡れることも気にせず、湿った芝生の上に大の字に横になってみた。
今までの生活や子供達の色々な表情、仕事、親、兄弟、友達…。
夢中になって思い出にひたっていると、目から大粒の涙が溢れ出る。
目を閉じても溢れ出る。
何とかしたいほど胸が締め付けられる。
すると、突然胸の締め付けが酷くなってきた。
余計にパニックになると、息苦しくなり、呼吸困難に…。
そして僕は気を失ってしまった。
どれ位たっただろうか…
ふと目が覚めると、泥だらけでびしょ濡れの僕は、手足や口に痺れを感じていた。
携帯を手に取ると、12~3件の着信が…。
妻と義姉からだった。
着信履歴を確認し終わってすぐ位に義姉から着信が…。
(俺)
「…もしもし…」
不安げに話す。
(義姉)
「あっっ、出た!もしもし?今どこ?大丈夫?」
もの凄く焦った様子で話す。
(俺)
「すみません…気を失っていたみたいで…」
(義姉)
「大丈夫なの?今どこ?」
(俺)
「大丈夫です。もう…いいですから…。ありがとうございました…。」
僕は強引に電話を切ってしまった。
それから、数時間だが、えらく長く感じる夜を寝ずに朝を迎えた。妻や義姉からの着信も数回あったが、でる事は無かった…。
朝、僕が勤めるのは妻の実家で経営する工場だ。
いつもよりずいぶんと早い出勤に、義父が話しかけてきた。
(義父)
「どうしたんだ今日は?早すぎるんじゃないか?」
その言葉は、とても優しく、とてもあたたかく感じた。
僕は、こみ上げる思いを抑えきれず、涙してしまった。
(義父)
「さぁ、一旦中に入れ」
義父は、焦ることなく僕の肩にそっと手をかけてくれた。そして事務所へと。
(義父)
「まぁ、ちょっと落ち着け」
涙のとまらない俺に、そっと、ティッシュとコーヒーを差し出してくれた。
気持ちを落ち着けると、僕は、先行きの不安からか義父に全てを打ち明け、別れる気も、復縁を考えて他言する気も無いこと、逆に聞かなかった事にしてほしいと伝えた。
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