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とある日の夜。
両親と弟妹達が死んだ──。
◇◆◇◆◇──
それは、そう、突然の事だった。
何の前触れも無く突然に、そういう感じだったのだ。
いや、もしかしたら予兆くらいはあったかもしれない。
けれど、今は何を言っても遅い。
もう、みんなはいないんだから。
何を言っても無駄だ。
「……そう、全部」
呟いて、少女は立ち上がった。
肩につく程度の茶髪は自分で染めたものだ。
ただ二、三年前に一度染めただけなのにまだ色を保っている。
前髪は鼻先まであって、目許を隠してしまっている。
しかし、彼女にとってそれは全く邪魔ではない。
むしろ好都合だ。
誰かに呼ばれた気がして、彼女は立ち上がる。
水無瀬 柚木(みなせ ゆずき)、中学三年生である。
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