『紅・滴り・指先』

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「……夕霧、此処を出たいと思わないか?」 「……え?」 息も絶え絶えの情事の後、主様は静かに言った。 「近い内に、必ずお前を迎えに来る。だから……」 それは、思いもしなかったお言葉で……私は天にも昇るような気持ちになった。 その一方、不安にもなった。 身請けではなく、駆け落ちだったりしたら? 近い内、とは具体的にどれ程の期間なのだろうか。 「主様、私と『指切り』をして下さいませ」 「何と?」 「不情の愛を誓って下さいませ」 主様の大きな手をとり、小指を絡めた。 絡めて擦り寄り、もう一度主様の耳元で、紅の落ちかけた唇でこう囁いた。 主様が、身体を硬直させたのを感じた。 私の指先を切り落とし、滴る紅の血に不変の愛を貴方に…… タイトル ~ゆびきり~
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