修羅場(ひろ美編)

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長男、長女を学校へ送り出し、次男を保育園へ……。  甘美な時と、隣り合わせで、日常は繰り返される。  日常があるから、智昭との時間が、より淫美で妖艶な、ひろ美を女として引き立たせる。  しかし、この日常がもし、奪われたら……、ひろ美には判るすべもない。  やはり、実際に遭遇してみないと、人というのは、心では判っていても、体では判らないものなのか………。  次男を保育園へ送った後、ひろ美は9時半に出社、早速、部長のデスクへ……。   川口は、少しひろ美からは目を反らし気味だった。   「今月一杯で、辞めさせて頂きます。お世話になりました……」   「ひろ美ちゃん、なにも、辞めなくても……」   少し小声で、続けた。   「昨日は、 その、悪かった……。  君を脅してどうこう、て訳じゃないんだよ……、  俺なりに心配だったからさ……」   苦しい言い訳だ。   「ご心配おかけしました……」   ひろ美は、自分の仕事に戻った。   理美がやってきた。   「ひろ美、辞めるの………? 今聞こえたんだけど…」   流石に早耳だ ……。   「小川さんにも、お世話になりっぱなしで……」   「やっぱ、相馬さんの事………?」   どうせ辞めるんだから、昨日の部長との一件を、話してみようかな。  実は、部長から聞く前から、相馬さんと理美てなんかあるんだろうか……? と思った事がある。  部長が、私を部屋に連れ込もうとした事は、まぁ、黙っててあげよう………。   「理美さん、今日て時間ある?」   「あるよ。飲み行く?」   ふと、携帯にメールの受信があるのに気付いた。   あれ、旦那から?!……、気付かなかった。   何だろ……?!   「話があるから、会社終わったら、迎えにいく」   慌てて、理美を呼び止めた。  「あ……、ごめん、やっぱ今日駄目になっちゃった……。  今度、理美さんの都合の良い時に、お願いします……」   続いて、智昭から、メール受信……。   「やっと会議終了……   ひろ美と、今度ゆっくり温泉でも行きたい……」   理美が少し呆れて言った   「お忙しいようで……」
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