修羅場(ひろ美編)

6/30

484人が本棚に入れています
本棚に追加
/202ページ
「ちょっと、嫌よ………! 何するの……?!」   「相馬て男とは、喜んで入ってんのに、旦那の俺とは嫌なの……?!」   完全にばれてるようだ……   「話がある、て言うから……」   「たまには、夫婦も、こういう所に来て、えっちしないとな……」   もう、駄目だ。 どうやって言い訳すればいいんだろう………?!   「その写真は……?!」   聡は車を停めて、後部座席から書類をとった。   ………興信所と書いてある大きな封筒と、あの、相馬智昭の妻、京子からの封書だ。   「俺の質問に答えてからだ……降りろよ……」   そうだ、携帯も消去しなきゃ………。   「あ、それと、携帯、渡して……」   「なんで………?!」   聡は、ひろ美に近づき、襟元を掴んだ。   「出せよ……!」   ひろ美は、震える手で、バッグから携帯を取り夫の聡に渡した。   「さ、入ろうか……」   携帯を見られたら、もう言い訳はできない。 写真だけならともかく………。   部屋に入って、聡は、テーブルに、車の後部座席にあった書類と封書を、バン、と置いた。  中から何十枚かの写真を取り出し、広げて見せた。   「こいつとは、いつから………?!」   ひろ美は黙ってた。 どんなに証拠が揃っていても、最後まで白を切るべきだと……思った。   聡は、ひろ美の携帯を開けた……。   「やめて……人の携帯、勝手に見ないで……」   ひろ美が聡から、携帯を取り返そうとしたが、それより早く、聡の右手が、ひろ美の頬を叩いた。   ひろ美は、床に倒れ、携帯画面を見入ってる聡に、改めて、恐怖を感じた。   (あたし、殺されるかも……)   聡は逆上すると、何するか判らない部分があった。   「へぇ……温泉の約束してんだ……。確かに、この何年か、ひろ美とは、旅行も行ってないからな……」   (他の女とは、行ってるけど、て言いたいの?)   そうだよ。聡だって、何度も浮気してるんじゃん……! 私はたった智昭だけよ。  でも、そういう問題じゃないよね…きっと、男と女は違う、て言うに決まってる……。 男は浮気は付き物だけど、女は許されない、なんてね。 よく判らない理屈だわ。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

484人が本棚に入れています
本棚に追加