幕開け(ひろ美編)

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30才を過ぎた頃、子供から少しは手が離れたので、事務のバイトを始めた。  「ひろ美ちゃーん、これコピーおねがぁーい…」  「はい、つか、ちゃん付けるのやめて下さいよ……、 いいおばさんなんだから」  「なぁーに言ってんの…… ひろ美ちゃん、若いよぉ……!  とても、3人も子供がいるなんて思えないし………」   「そんな事ないですよ。じゃ、お預かりしますね」   急いで、コピー機に向かった。  大体あの部長、自分が楽したいから、私にあんなお世辞言ってるに決まってる……、 たくもう、こっちだって、仕事溜まってるのに……。   誰かとぶつかった。  「いったぁ~~い!」   大変……、書類、拾わないと………!  誰……?この人?!  違う課の人なのかな……。 「す、すみません…!」 同じ社の人間ならともかく、取引先のお偉いさんだったら……、やばいっしょ……!   「大丈夫……? 怪我ない……?! ごめんね。よそ見してて…」 「とんでもないです。あの、私の方こそ…」  気がついたら、その人は私が落とした書類を全て拾ってくれた。   「はい……。 本当に怪我は無かった……?」 「だ、大丈夫です。 有難うございました」  わりと良い男……?!  彼は先程の調子良い川辺部長の元へ向かった。   「あ、これはどうも、わざわざすみませんね、相馬さん」   相馬さん……? 相馬……、なんていうんだろう、  どこの会社の人……?  部長があんなペコペコしてる、て事は、やっぱ得意先の人だよね……?!  ま、別に関係ないけど。  (コピーしなきゃ……) コピーが上がり、部長の元へ……、 隣にいる相馬さんに、挨拶した。  「先程は失礼致しました」    「これ、良かったら……」  絆創膏だ……。  「あ……、そんな、大丈夫ですよ…」   「それと、相馬です。ちょくちょくこちらに伺うと思うので、宜しく」   名刺を渡された。バイトの私に……。   え……?! 大和商事、取締役……、相馬智明………?!」 取締役……?!
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