幕開け(ひろ美編)

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「あ……、あの、私、瀬崎です。   名刺はありませんが………」  「瀬崎さん……?  下の名前は……?」 え、下の名前…聞くか……?!ふつー……。  「瀬崎ひろ美です」  「ひろ美さん、これからも宜しく……」  「いえ……、こちらこそ」   私はデスクに戻った。  文書の直しを今日中にやらないと、ちびの保育園迎えに行くの、また遅れる………。  「じゃあ、そういう事で、宜しくお願いします」 相馬智昭が、部長に挨拶して出る時、 私に視線を向けて、一礼した。  「あ、どうも……、お気をつけて………」   聞こえてないけど………。 彼を目で追った。 仕事に取り掛からないといけないのに……。  (また、お会いできるかな……?!) 、   は……?!  何考えてるの、私 。 「ひろ美、彼に惚れちゃ駄目よ…」   入社8年目の、小川理美だ。  ベテランだけど、年下。   私は入ったばかりだし、まして、バイトだから、大体、彼女に対しては敬語を使っている。 年下でも。 当たり前だし……。  「いや、あの、惚れる、て、有り得ないですよ……」 「なんで?」   「なんで、て、主婦ですよ…」   「関係ないじゃない。主婦でも、女なんだから」   判ってないなぁ、結婚して子供ができちゃうと、女じゃなくなるのよ。あんた、結婚してないから、判らないだけ……  でも、確かに、今は主婦の不倫や援交なんかも、よくある話だけどね…  私には無縁な話だよ。だって、S○Xしたくないし……。   「私は、そんなの、関係ないですし。もう、女捨ててますから」  「そうかな。ひろ美は色っぽいよ。女捨ててる訳はないよ……。 もしそうなら、女のあたしが、女を感じる訳ないわよ……!」  「どういう意味ですか?」 「男から見て、抱きたいと思えるか、そうじゃないか……、  ひろ美は、女だよ……! フェロモン感じるもん……!」  フェロモン……?!   どうでもいいけど、仕事させて…   理美は続けて話した。  「でも、あの相馬智昭はやめなさいよ。 あれ、婿養子なのよ。  奥さんは〇×財閥会長のご令嬢……睨まれたら怖いから……。  会社ごと潰すの訳ないのよ……!」
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