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春休みが残りあと4日という今日。
さっきまで普通で平凡で平和だった日々がもみくちゃにされた。
それは夕方に始まった。
家の電話が鳴り、お母さんは晩ご飯の買い物に行っているみたいだったので、アヤカが電話をとった。
?:『もしもし?そちら坂波さんのお宅でしょうか?』
突然の知らない人からの電話にびくつきながら、アヤカは応えた。
アヤカ:「はい、そうですが…」
?:『私、第三新東京市立大学病院の者です』
アヤカ:「病院?」
医師:『はい。たった今坂波マキコ様が救急車でこちらに運ばれまして、』
医師の言葉をさえぎってアヤカが冷静に問いただした。
アヤカ:「あたしの母がですか?」
医師:『はい。運転免許証を拝見しましたところ、坂波マキコ様で間違いありません』
アヤカの頭の中は嫌な予感でいっぱいになった。
アヤカ:「母が……どうかしたんですか?」
医師が淡々と答える。
医師:『先程交通事故に遭われまして、病院に運ばれました』
アヤカ:「それで、無事なんですね?」
アヤカはなるべく冷静を装って聞きかえす。
医師:『それが……こちらに運ばれたときにはすでに息がなく……、お亡くなりになりました』
医師はとても言いにくそうにアヤカに事実を告げた。
急に外で鳴いているはずのセミが耳元で何匹も鳴いているような感覚がして、アヤカの聴覚を軽く奪ってくれた。
アヤカ:「すぐに向かいます」
それだけ言って、電話をきった。
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