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父が出ていってしまってから、アヤカも父と同じように母の顔をのぞいてみる。
まず思うのは、綺麗だなということ。
母の顔は整っていて、そのまわりをふわふわとウェーブした茶髪が華やかさを添える。
父はこの美しい顔を見て、母に最後に何を伝えたのだろう。
アヤカには、父が母に何かを言ったように感じたのだ。
実際は声には出していなかったが……。
『愛してる』だろうか?
それとも『すまなかった』か?
それとも『死んでくれてうれしい』とか……?
三つ目の台詞は考えたくない。
いくら父でも、死んだ人に向かってそれは言わないだろう。
私なら今、母に何と言いたいだろう。
たぶん三つのうちどれでもない。
「ありがとう」
とアヤカは声に出して言った。
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