切裂話

こうして彼女は、一人になる。

　　　　　……

　ジャックは妖精達の言葉の通り歩き続ける。例え嘘であろうと森から抜け出せるならばどんな茨の道も苦にはならない。
　はやくあの女を掴みあげて腹を裂いてやらなければジャックの怒りは頂点を越えて堪忍袋が破裂してしまう。怒りは心の奥底に青い火として灯り続けている。

　森を歩くこと数時間、ようやくジャックは森以外の物を見つけた。霧に包まれている湖、さらに奥を見るとぼやけて醜いが紅い建造物があることが確認できる。

(あの三人の言葉はあってた、なら次はあの屋敷だ)

　建造物があるならば雨風を凌げるであろうし、人がいたならばこの疼く衝動をもしかしたら発散できるかもしれない。行かない選択肢は生まれず、休まずにぼやけて見える紅い建造物に向かい歩いていくのであった。

　　　　　◇　　　◆　　　◇

　暗い、暗い巨大な地下の部屋で一人の少女は呆けたように椅子に座りながら天井を仰ぎ見ている。

　つまらない、退屈、何かないかな、お腹すいたな、つまんない。

　少女は何回も何回も同じ事を考えては消して、考え消してと暇を消費しながらもまた暇を作り出していた。