こうして彼女は、一人になる。

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 メスのような鋭利な刃物は相手の腕の部分の服裂き、空虚を切るだけだった。ジャックは小さく舌打ちをしながら後ろに下がりまた間合いをとる。 「お強いですね。力量を計れずに来る馬鹿奴らとは違う……貴女は人間ですよね?」 「……力量を計れない馬鹿、ふぅん……まぁいい。確かに私は人間、只のひ弱な哺乳類にすぎない」 「ははっ……ご冗談を」  門番はジャックの言葉に苦笑しながら答える。この紅い屋敷に来る侵入者を退け続けて来た門番は内心、焦っているのだ。人間とは思えない強さを持ちながら、人間とは思えない殺気を放っている……眼前の悪魔の存在を。 「冗談……か、そうか。ならいい……罷り通る」 「え」  メスのような鋭利な刃物を握り、ジャックは構え解いた。無防備とも取れるぐらいに構えていないジャックに対して門番は呆れ、直ぐ様焦っている思考を奮い立たせる。 (今がっ……チャンス!)  ――斬祭「ウェスタン・ホリック」 死には至らない刃。  ――門番、紅 美鈴(ほん めいりん)浅はかな思考で動いてしまった。その瞬間にジャックは倒れている美鈴を一見もせずに門を開けて中に入って行く。 (え……まさか、一瞬でやられちゃったの?)  死には至らぬ傷、殺那的にジャックは美鈴を打ち倒してしまう。それこそがジャックが人間であるかどうかの定義を曖昧にもしかねないことであることを、誰も知らない。
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