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お世辞にも良い家とは言えない荒んだ家に少女は帰宅した。軋む木製のドアを開け、電気も無い部屋に入ろうとするが――止まった。
「誰だ」
「あら、まさか気付かれるとは……予想外ね」
少女はメスのような鋭利な刃物を何も無い空間に投げた。投げた刃物は壁には突き刺さらず、何も無い空間に突き刺さっていた。
次第に何も無い空間に亀裂が入り、数秒後には人が通れるくらいの穴にへと変化していた。
(……何よ、このイレギュラー。無い場所に有るなんて)
「ボンソワール、名無しの権兵さん。こちらではジャックと言うのが正解かしら?」
何も無い空間からの声では無く、気配も感じない後ろから声が聞こえた。少女、ジャックは予想外の事にも表情を変えずに置いてある椅子にゆっくりと腰かけた。
「何か用か、それとも……私が切り裂き魔として」
「“The Jews ary the men That Will not be Blamed for nothing”」
「……!?」
金髪の女性は部屋には不釣り合いな日傘を射しながらある言葉を呟いた。その言葉を聞いたジャックは無表情から鋭い目付き、殺人鬼の目に変わっていた。
「ユダヤ人は理由も無く責められる人達なのでは無い、でしたっけ?」
「……何が目的だ?」
金髪の女性はジャックの言葉が嬉しかったのか微笑を浮かべながら日傘を閉じた。
「良かったですわ、あのご高名なジャックさんなら直ぐ様切り殺してくると思ってましたので」
「……御託はいらない、何を言いたいかだけ話せ」
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