切裂話

こうして彼女は、一人になる。

　気が付いたら森の中に居た。大の字に寝ていたのか最初に見たのは強く空に伸びている幹や青々しい葉っぱ。
　何時間も寝ていたのだろう、服や髪などには落ち葉がくっついている。眠気から目覚めた思考には今いるであろう場所の確認さえも鈍らせる。

「ここ、は？」

　思わず呟きながらジャックはゆっくりと立ち上がり、付いた葉を手で落としていく。
　記憶の中には無い知らない場所、足を踏みしめて歩いたことがにい、来たことがない場所。完全にジャックは今いる場所が分からないのである。

(あの糞女……何処に送りやがったのよ)

　金髪の女性に悪態をつき、ジャックは近くに落としていた自分のメスのように鋭利な刃物を左手で拾い、何回も握り治して感覚を直す。

「仕方ない……」

　やれやれとため息を吐き、ボサボサとした黒髪を前から後ろに流す。勝手に伸びる為にジャックは髪を手入れしない。前に女の子らしくないと指摘されたが、ジャックにとってはどうでもいいことであった。