こうして彼女は、一人になる。

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     ◇   ◆   ◇  森の匂いが鼻から肺に送られる。その匂いが青々しくて無意識に顔をしかめてマフラーで顔の半分を隠す。何時間、何十分も歩き続けても出口や他の場所に出ることが出来ず。ジャックは歩きながらどうするかと考える。  不意に左の木の幹を見ると、人為的に傷を付けられている一本線を見つける。一本線を見つけたジャックは息を吐いて足を止めた。  その一本線の傷はジャックが自分で付けたもの。何時間前につけた傷の場所にまた付いてしまった。この事がジャックがこの森で迷子になっていることを告げる。 (しかし、色々な方向に歩いたのに。結局着くのはこの幹の場所に着いちゃう……森自体に何かあるのかしら? それとも人為的に迷わされているの?)  木を椅子がわりにしてジャックは考える、この森のことを。何処に向かってもたどり着く場所は一ヶ所。森に迷わせる何かがあるなら、森の木を一本残らず切ればいいのだが。人為的ならまた話しはかわる。
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