序章

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家族は両親と俺と姉の四人で、姉は独立して東京へ、親は共に休日が不定期な仕事をしていて家には大体俺とコイツ、白瀬杏奈というメイドしかいない。 白瀬が此処に住み込みで働くようになったのは、ちゃんと理由がある。 彼女の家族は既に事故で他界しており、親戚も余りいなかったために孤児院に入れられる予定だった。俺の母親は彼女の両親と仲が良く、杏奈の事も幼い頃から知っていた。 俺も何度かなら、話しこそしなかったものの会った事はある。 俺の母親は杏奈を引き取ると言った。だが、杏奈は両親の苗字が変わるのを拒否し、ならばウチで住み込みで働くという事を提案したのだ。 両親がよく留守にするため、俺を家事の世話をする家成婦として。 結果として、彼女は今も我が家に自分の部屋を持ち、朝になるとメイド服を着て起こしにやって来る。 メイド服を着ているのは何も俺の趣味では無い。母親が「この方がそれっぽいし、可愛いでしょ?」という冗談みたいな理由でこの服装を義務付けられているのだ。 彼女は最初愚痴をブツブツと漏らしていたが、後で自分の部屋を掃除している時に、鏡を見て軽くポーズを取って「………カワイイ」と呟いていたのを覚えている。 俺が似合っていると言ったら、そっぽを向かれてしまったのは軽くショックだったけど。 ちなみに、母親はリアルに言った訳ではなくメイド服は只のギャグだったらしい。只のギャグにメイド服を調達するのもどうかと思うが。
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