強行着陸

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 夜もすっかり更け、空気も冷えきったころ、燦燦と輝く赤色灯は目を刺すようだった。無駄に大きな警報に、あちこちから罵声に似た整備員たちの声が聞こえてくる。  ラダーを勢いよく駆け上り、飛び乗るようにコックピットに義冬はついた。少し遅れて能松少尉も後席に乗る。ヘルメット、装着。 「システムチェックE」義冬が叫ぶ。 「IFF(敵味方識別装置)、FCS(火気管制システム)、電子偵察システム、オールグリーン」 「オーケ。セイフティピン解除を頼む」  機体下の整備員らが全部で4本あるミサイルのセイフティピンを引き抜く。その間にも義冬はチェックを続行。 「PCコネクトケーブル解除。エンジン始動・・・・・出力グリーン」 『下回り上々!インカム外します。グッドラック!』セイフティピンを外し終わった整備員が甲高い声で叫ぶ。  スクランブル(緊急発進)用の格納庫は滑走路に直結している。さっきまでは暗闇の中に溶け込んで見えなかった滑走路も、今じゃ真昼の太陽にも負けない照明光を反射して眩い。それでも約2200mのこの路の終端は見えそうになかった。そしてその先は日本海だ。 「こちらランサー1より佐渡タワー。スクランブルオーダー」 『こちら佐渡タワー。離陸許可』 「了解」スロットルレバーを押し込み、ロックする。パワー、ミリタリーに移行。HUD(ヘッドアップ・ディスプレイ)の数値が一気に跳ね上がる。滑走路の白線、照明灯が流れていく。スロットルロックを解除し更に押し込む。アフターバーナー点火。紅い炎が次第に青紫に輝き、尾が伸びてゆく。速度、離陸可能域に到達。 「テイクオフ」操縦桿をゆっくりと引いていく。  フワリと機体がアスファルトから離れるとすぐにランディングギアが収納される。仰角はそのままを維持。さっきまでの基地の照明がどんどん小さく弱くなっていき、終いには白い光の点となってしまった。アフターバーナーを解除し、スロットルの位置をミリタリーに戻す。
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