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また、春がやってきた。
公園に咲く桜の花によそ見をしつつ、道路の向かいにある本屋を目指す。
自動ドアをくぐると、行きつけの本屋はいつも通りの香りと雰囲気で私を歓迎してくれた。
顔見知りの店員さんと笑顔を交わし、ここ1ヶ月毎日通っているコーナーへと足を向ける。
売り上げベスト5の本が置いてある平台の前まで行き、ついつい顔がニヤけてしまった。
発売して一週間でこの平台に乗る事になった【恋愛小説】という本。
作者の名前は真崎楓。
…そう。
書籍化された私の初めての本だ。
克也に伝えたくて一心不乱、不眠不休で書き上げた長編はその雑誌では類を見ない程好評を博し。
最終話が掲載された1ヶ月後には書籍化されていた。
本になった自分の作品を手にした時、手が震えたのをまだ覚えている。
こうして人気となっているのも私の都合の良い夢なのかと疑ってしまう程だ。
「ほら!あったよ、これこれ!買って読んでみなって~!」
ニヤニヤとしていると、やたらキャッキャッした二人の女子高生が私の隣に走り込んでくる。
その片方が手を伸ばしたのは、私の本だった。
「これすごい良いから!超泣けるし!」
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