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一年経って、克也はもう日本に戻ってきているはずだ。
なのに何の反応もないという事は…私の本に気づいていないか、気づいていても読んでいないか。
もしくは…読んだけど既に克也の心は私に向けられてはいなかったか…。
そこまで考え、俯いた。
せめて読んでくれていたら良いな。
謝りたかった事、まだあなたを愛しているという事…それを知っていてくれさえいれば、少しは救われる。
三列に積まれた本を手に取りぼんやりと表紙を眺めた。
「これ、作者の実話だそうですよ。」
急に隣りから低い声が響き、肩がビクつく。
この声…。
「…世界に一つしかない、素晴らしいラブレターだと思いませんか?」
体が震えた。
この声に聞き覚えがある。
いや、聞き覚えなんてもんじゃない。
聞きたくて聞きたくてたまらなかった。
「実は俺作者に一度プロポーズしてフラれてるんですよ。諦めようと思って、海外に逃げました。」
思いきって隣りに顔を向ける。
「…克…也…。」
そこには、一年前より少しだけ髪が伸びた…だけど変わらない愛しい人が立っていた。
その瞳は真っ直ぐに私の本へと向けられている。
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