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「…だけど、結局無駄でした。寝ても覚めても彼女の事ばかり。愛しい、会いたいという気持ちが止まらないんです。そしてやっと帰ってきて空港の本屋でこの本を見つけた。…こんな熱いラブレターを俺は他に知りません。」
克也の声が、言葉が素直に胸に染み込んでいく。
こみ上げる涙をこらえ、しっかりとその横顔を見つめた。
「いきなり彼氏が暴力を奮う様を見せられて…傷ついたのは俺じゃない。彼女だったはずなのに…。」
それは違う。
傷つけたのはやはり私なのだ。
そう言いたいのに唇が震えて言葉にならない。
「俺、彼女の家に向かう途中なんです。」
そう言って、克也が体ごと私の方を向いた。
一年ぶりに見る、私を真っ直ぐに見つめるその瞳に、耐え切れない涙が零れ落ちる。
その雫を指で拭い、克也が笑った。
「もう一度楓にプロポーズをしようと思うんだけど、…彼女はなんて答えると思う?」
その言葉を聞いた途端、両腕を広げ克也の胸に飛び込んだ。
彼の温もりが教えてくれる。
これは夢ではないのだと。
諦めなくて良かった。
諦めずに頑張れば、きっと奇跡がやってくる。
克也の腕が私を抱きしめ返してくれるのを感じながら、静かに口を開いた。
「もちろん、YESと―――――」
END
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