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私は今更ながらにきづく。
人間の死に尊厳をあたえていたのは、生きている者たちの意思だったのだと……。
死を悼む者がいなければ、荒野に晒された獣の死骸と同じ。
もしくは、それ以下の存在に成り下がる。
そんなことを考えていた私の目の前で――
臓腑の絡まった赤黒く太い槍が、許しを乞いながら這い蹲っている老婆の身体を貫いた……!
この世のものとは思えない声を上げて痙攣する老婆は、主に祈りを捧げることもできずに絶命した。
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