68人が本棚に入れています
本棚に追加
そのままの体勢で言う。
綾「用があるなら、出てきたらどうだ?」
低くドスの利いた声に、近くの木の陰からある1人の女性が姿を現した。
……いや、姿を現した…では語弊があるかもしれない。
その女性は突如現れた霧のようなものに、映り込んでいたのだから。
綾「!」
綾女は一瞬目を見開いたが、ゆっくり警戒を強めながら言った。
綾「あんた…何者だ?」
目を細め睨みながら木刀をかまえる綾女に、その女性は苦しそうにしながら口を動かした。
???<タ・ス・ケ・テ>
綾「(た・す・け・て……助けて……!)」
綾女は警戒しながら、女性の口の動きから言ったことを推測して驚いた。
綾「おいっあんた、助けてって言ったのか?」
???<…コクリ>
女性が頷くのを見ると、綾女は眉根を寄せた。
知らない相手に、助けてなんて言われる意味がわからない。
首をひねっていると、声が聞こえた。
???<ノアクラークを救って>
綾「ノアクラーク?」
???<貴女にしか出来ないの…お願い>
綾「俺にしか出来ないって、どういうことだ」
意味のわからない言葉のオンパレードに綾女は頭を抱えた。
???<もう時間が無い…どうかお願い。ノアクラークを…この世界を…救…って…>
そう言い終わるか否か、霧のようなものはうやむやに霧散した。
最初のコメントを投稿しよう!