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私が子供の頃は、
割と現実的で、世の中に不思議なものなんかないと思っていた。
なんでもタネがあるってね。
だから友達でサンタを見たなんて言ってるヤツがいると、散々バカにした。
そんなの親父の芝居に決まってるだろって。
でもそう言いながら、
本当はうらやましかったんだ。
親父がサンタをやってくれるなんてね。
私の親父は飲んだくれでね、
一年中仕事もしないで家で飲んでいたんだ。
プレゼントなんかくれたこともない。
それどころかクリスマスになると、
さすがに家にいづらいらしくて、
決まって出ていっちゃうんだ。
他の家の親父はサンタのフリまでしてくれるのに私の親父は最低だと思ってた。
あの時までは。
クリスマスの明くる日。
親父がヘトヘトになって帰ってきたのを見たんだ。
寒さで顔を真っ赤にして。
私はふと、
その顔をどこかで見たことがあると思った。
次の瞬間私は、
親父がなぜ一年中家にいて、
毎年クリスマスの日だけ出かけるのかが解った。
ショックだった。
親父の正体はサンタクロースだったんだ。
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