六の巻

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六の巻

東宮、慧仁は、悠惟左大臣を苦々しく思っていた皇女を母にもち、国母を実姉に持ち、流行り病で父や兄たちを失ったがために手に入れた左大臣の地位。奢り高ぶり、幼い帝を傀儡として、やりたい放題、先帝に退位を迫り、挙げ句の果ては、寵愛されていた女御も帝さえ出家させ、邪魔者を消すがごとく排除した。 長兄の樺讃院の譲位、出家も藤原悠惟が裏で工作していたのではないだろうかと疑念も消えない。左大臣は、次の東宮となるはずの晴仁親王を仏門にいれ、幼い皇女、那子は遠く斎宮に送りだした。やり方は見えすいてる常盤帝には、すでに皇子が誕生しているが左大臣悠惟は、なんとしても、この皇子を蹴落とすだろう。 そんなことはさせないと決心はあった。 悠惟の娘の女御は、まだ幼い。 慧仁東宮は、一の皇子、綾仁親王の成長を見届けて、東宮を譲位する決心でいた。左大臣家の姫が帝の夜のお召しにかかる前に。 帝も左大臣家の姫を無碍にはできないだろう。 だが華子中宮は、樺讃院の皇女だ。身分からいえば東宮になるのは当然だが、古狸の左大臣だ。 なんとしても、自分の孫を東宮から帝にし、やりたい放題にするだろう。それだけは阻止しなくては。 慧仁は行動に移した。 まず尼寺に預けられてしまった那子内親王、晴仁親王を還俗させ、自分のもとに引き取った。 左大臣以外の大臣は慧仁の行動を怪訝そうに眺めていたが、左大臣は兄への供養かとほくそ笑んでいた。 だがこれで終わりではない。 斎宮に送られた那子内親王お役目交代を申し出た那子は、幼なすぎ、斎宮の職務を果たせないと帝に申し出た。 さすがに左大臣は反論にでた。 慣例の占いで選ばれたわけでもなく、まだほんの幼少で送りだされ、今だに斎宮の職務も行える年齢ではない。 帝のためにも伊勢の斎宮の祈りは重大。 このままでは、伊勢の神々の怒りを買うことになると、陰陽師の助言もあり帝は新しい斎宮を占うように指示をだした。 こうして兄帝の御子らを取り戻した慧仁東宮は、なりをひそめたように、おとなしくなった。
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