七の巻

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七の巻

いよいよ慧仁東宮が動き出した。 常盤帝の一の皇子、綾仁が8歳になったころ、中宮、華子は病に伏せがちとなっていた。三の宮、薫子内親王は、誕生した時から産声が弱く成長するに至っても床から起きあがれる日は少ない子だった。宮中に仇なす怨念が薫子に、華子中宮にまで手を伸ばしているようだった慧仁は伊勢から取り戻した那子の皇女は選ばれし斎宮であったことを陰陽師より知らされた。 遠くないうちに、その力が必要になるときが来るだが今は自分を守る術すらわからないで身を危険にさらしていると諭され、上賀茂の斎院のもとに預けた。 賀茂の斎院とは、一度任意を受けると簡単には交代しない。 そして今の斎院は幸運かお導きか、叔母の柚子が勤めている。 強い結界の中に守られながら那子は巫女としての力を蓄えて、12歳で薫子の皇女のもとに参内し華子中宮と子供たちが暮らす楓殿に宮中の中から結界を張った。 効果ありのようで、中宮華子は、快癒し、床払いすることができた。 以来那子は数奇な運命が待ちうける宮中に残ることになる。 生まれて数年、この宮中にいたのだと今さらのように思いめぐらしてはいた。 広大な中庭を挟んで藤壺殿には、またしても邪魔が入ったと左大臣が目尻を痙攣させていた。 そうでなくとも、女御の燿子のもとに帝が渡ってきてくれるようになったもの、懐妊の兆しが見えないまま、東宮候補の綾仁は成長していき、目にもかけていなかった菖蒲殿の更衣、明石が、敦仁親王を生み、実妹の梨壺の女御瑛子は皇女、枇子一人授かっただけで懐妊の兆しはない。帝の寵愛がなかなか燿子に集中しないのも悩みの種だ。 なんとしても次の東宮には燿子の皇子をたて、慧仁東宮も引きずり落とし綾仁、敦仁には、チャンスを与えないと野心に燃えていた。 そんな藤原悠惟の邪心にきづかぬ慧仁東宮ばかりではない。 少しずつ反逆の根回しも播但だった。 いよいよ、慧仁の幕があがり、波乱の幕明けかもしれない。
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