九の巻

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九の巻

帝の悲しみを癒やしたのは、華やかな女御殿の藤壺の女御だった。 左大臣はもろ手を上げてよろこんだ。 ようやく皇子が生まれると。 反対に燿子女御は、父の思いに暗を示していた。今、自分が皇子を産めば父、左大臣は躍起になって東宮にしようと暗躍するだろう。 ようやく慧仁親王のおかげで帝位争いも起こらないように安泰した世がきているというのに。 東宮には亡き中宮の親王が地位についている。 次の東宮は先帝の皇子、晴仁親王となるだろう。自分は皇女を授かれば、何の問題もないとため息まじりの思いを蓄えていた。
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