十二の巻

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<申し訳ございませぬ。娘かわいさで那子の方様にはご無理を申しました。お方様のご懐妊の姿も昨日、驚きました次第でして> <叔父上、左大臣の任を辞任なされよ。これだけの問題を起こしたあなたを放任することは、他の者たちへの示しがつかぬ> つい先ほどまで皇子誕生に祝いに媚びた他の大臣たちも、扇で顔を隠し、ながらも帝に同調した。<いくらなんでも内親王様に暴言を吐かれるとは><悠惟殿は驕りすぎましたなあ> ギロリと睨むと肩をすくめて、扇で顔を隠し、両隣と声を潜めながら、あざらう視線を向けていた<帝、私は帝を即位した幼少のころよりお助けして政務を行ってまいりました。ようやく皇子も授かりこれからという時に辞任せよとはあまりな> <藤原の悠惟殿、そなた、身分をわきまえてはどうか、たしかに左大臣の役職は帝の補佐かもしれぬ。しかし那子は、先帝のれっきとした内親王だそして幼いあの姫を伊勢に無理やり送り込んだ。次の東宮となるはずだった晴仁親王を仏門に入れ東宮の道を閉ざした。それだけでも重罪であろう帝が幼少なのを利用し、やりたい放題、そろそろ開け渡す時ではないのかね> <くっ>口惜しいが反論できずに拳が小刻みに揺れる。 <叔父上、あなただけに責任はとらせぬ。藤壺の女御にも、皇子が生まれた。義理は通したであろう。そろそろ、綾仁に帝の位を渡さなくてはと思っていたところだ> <帝> 突然の譲位に周りは慌てふためいた。 <戯れ言ではない。私も疲れた。いつまでも東宮をお待たせするわけにはいかぬからな> 常盤帝は退位され、東宮綾仁親王が瀧宮帝となり沙子の女御は中宮となった。 次の東宮には、慧仁親王の一の皇子、智仁親王で東宮妃には、椰子内親王がいる。崇司院の一の姫だ。
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