十四の巻

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いよいよ、長きに渡って待ちかねた時がきた。 泰仁親王を10歳で新帝にするつもりでいた。 だが先手を打たれ、中継ぎの東宮であった紘仁親王が新帝、曼珠帝を襲名した。 またもや幼帝を手駒にしてこの世を自由に動かすると胸弾んでいた藤原悠惟だったのだが、奈落の底に落とされた。 東宮妃は、常磐帝と妹の女御、瑛子の姫、寧子の方だ。簡単には、引きずりおろすことは不可能だ隼把帝は、幼き東宮をそばに置き、帝王学を学ばせていた。 母、渉渓院からの願いでもあった。 父、藤原悠惟の傀儡にしないでほしいと。 政務の場にも、帝と共に御簾に入り、考え、答えるということを学ばせた。 おもしろくないのは、左大臣、藤原悠惟、あてがはずれて、常盤帝の時のように権威を握ることができずにいた。 どうしたものかと思案しているうちに数年が歯噛みしたまま、過ぎていき後宮がいよいよ騒がしくなりだした。 こうならばと孫娘の輿入れを急がせた。 息子と皇族の姫との間に生まれた孫姫に白羽の矢を立てた。 まだ幼いが他の娘たちに先を越されては、渉渓女院のように他の女御に寵愛を持っていかれてしまう。 叔父と姪になる。遊び相手から寵愛をの流れに持っていこうと策を練っていた。 東宮が13になると、一早く孫娘の碧子を輿入れさせた。 東宮もまた、幼いながらも、父の血を引く皇子は自分だけだと重責も感じていたが、他の女御たちと違い、顔知る、叔父、聡惟の娘、碧子とは、肩肘はらずに和めた。 彼女となら、うまくやっていけるだろう。 曼珠帝も、いつもの笑みで守ってくれていた。
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