四の巻

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四の巻

崇司帝の御世は7年と、やや続いたほうであった内待・唯子が病の床に臥し、里下がりをした。 この頃には、父たちを次々と奪った流行り病も、収まり、末兄の悠惟が大臣として牽制をふるっていた。 悠惟邸の西の対の屋敷に生母は、悠惟が不自由なく面倒を見てくれていた。内待・唯子も、ここに落ち着いた。 だが唯子は、宮中での長年の疲労からか、回復に向かうことなく、弱り、残してきた姫を案じて命の灯は消えてしまった。崇司帝からは、悔やみの使者がきたものの、皇女の話しになると首を傾げていた。 唯子が与えられた春舎は当然静まり返っているが引き取り先の藤壺の中宮のもとにもいない様子だと告げた。 崇司帝には、悠惟の異母妹の唯子と実妹の燈子(とうこ)が藤壺殿に輿入れし、ともに皇女が生まれている。唯子の皇女は一の宮、椰子内親王、燈子の皇子は三ノ宮、沙子内親王。 梨壺殿の女御が二ノ宮の皇子、晴仁親王、四ノ宮、皇女、那子内親王の4人の子がいるが、唯子は里下がりの折に異母妹の燈子に椰子姫を預けていったはずだがと怪訝に思った。 帝は皇子を生んだ梨壺殿の女御を中宮に押したがここは権力者、燈子を中宮にした。 それでも梨壺殿の女御を寵愛していると聞いていた。 唯子の身分は内待だが、燈子の養女として育てて東宮のもとに輿入れさせる算段をしていた。 主なき殿舎はすでに片付けて女房たちも分散されたかと静けさを思いきや、妹、燈子の藤壺殿は、いつもと同じで椰子の姿もみえない。 そして以外な事実を耳にした。
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