四の巻

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燈子と唯子は、女御と内待と身分こそ違え姉妹であることに間違えはない、姉の唯子を、よく藤壺殿に招いていた。唯子が床に伏し出すと、自ら見舞いに行ったりとライバルというより、仲のよい姉妹のようで。 やはりこのたびの里下がりの折は燈子から姫・椰子を預かることを申し出た。 椰子は五歳になる。 母がいない春舎では、女房たちの数も減り寂しくなる。 にぎやかで同じ年頃の姫がいる藤壺に引き取れば寂しくないだろうと。 一早く、御所にも、燈子のもとにも唯子が亡くなった知らせは届いた。 このあと、帝の仕打ちはひどいものだった。 燈子から、椰子を取り上げ、出家させ、門跡の尼寺に入れてしまったのだ。 我が子を一の姫を、ここまでの仕打ちとは。 門跡は皇女が院主を勤める由緒ある尼寺なのだ。いくら母を失ったからといってまだ五歳、帝の皇女ならば引く手多であるはずなのに、どうして?おそらく梨壺殿の女御の差し金であろう。 このところ、帝の寵愛は藤原一族の勢力に従い、中宮・燈子に移りつつあった。 本当なら自分が国母として、中宮になって、帝の寵愛を一心に受け、皇子の次の東宮も確定していたはずなのに。 燈子に皇子が生まれたら藤原一族だ、中宮の皇子だ、東宮の地位も、得られなくなってしまう。 門跡が一つ、空白になる母親の身分を考えたら、椰子には最適ではないか幸せではないかと諭したのだ。 帝の皇女だ、生母の身分は低くとも藤原一族だ。異母姉妹の燈子中宮が母代となればよいという考えが崇司帝には浮かばす、女御に言われるがままに那子姫を門跡にしてしまった。 これが悠惟の怒りを買うことになるのだ
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