14人が本棚に入れています
本棚に追加
渋滞にあたることもなく、タクシーは走り続ける。
窓の外を流れる景色は単調で退屈なものだったが、珠生の胸の内は、数時間後に訪れる授賞式や春から入学する高校生活のことで、沸き立っていた。
そんな思いを胸に、自然と顔を綻ばせていた時だった。「おや?」と、タクシーの運転が小さく呟いた。
珠生は、外の景色から運転手へと視線を向けた。
「あのトレーラーまさか…」
運転手が言わんとすることを確かめるよう視線をフロントガラスへと移すと、数台先の別車線を走る大型トレーラーが見て取れた。
(あれがどうしたんだろう?)
暫く見ていた珠生も、直ぐに「あっ」と声を上げた。トレーラーが左右に、大きく蛇行し始めたのである。
後続車がクラクションを鳴らす。するとトレーラーは車線に戻り走り続ける。しかしまた暫くすると、蛇行を始めるのだった。
「まずいんじゃないか。あのトレーラー」とタクシーの運転手が言い掛けた時だった。トレーラーが更に大きく左に寄ったのは。
隣車線の運転手が避けつつ大きくクラクションをならし、それに気付いたトレーラーの運転手は、車線に戻ろうとハンドルを切ったが、遅かった。
避けようとした車は隣車線の車と接触し、トレーラーは大きく右にハンドルを切りすぎ、中央分離帯に激しく衝突。その勢いで横転。後続車は次々と追突していった。
最初のコメントを投稿しよう!