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◆◆◆◆
「ね、今の人見た!?」
「見た!超カッコいい💕」
廊下で足早にすれ違いながらも、二人の若い看護師たちは鋭いチェックを怠らなかった。
遠目からでも人目を引く等身バランスの男は、その容貌も裏切らなかった。
歳は26、7ほど。黒髪に縁取られた顔立ちは細面であったが、そこから受ける印象は中性的なものではなかった。
全体的には柔和そうでありながら、目鼻立ちそれぞれは硬質的なためか、とらえどころのない、どこか浮世離れ感のある雰囲気を持っていた。
しかし黒く濡れたような瞳は放つ力が強く、それが見るものを惹き付けるようであった。
「仕事、何してる人だろ?」
「サラリーマン…じやないことはわかる!」
「クリエイティブなニオイがする!!」
「あー、似合うっ!」
「あなた達、そこで何を騒いでいるの!」
一喝する小声が響いた。
「遠野師長!?す…スミマセンっ💦」
「早く仕事に戻りなさい!」
二人の看護師がバタバタと病室に入るのを見届けると、師長は小さなため息と共に呟いた。「次は向こうね」と。
◆◆◆◆
「津崎さん、私も最近写真始めたんですよ❤」
「えーそうなんですか」
診察室。つい立ての向こう、少し意外そうな口調ではあったが、さほど興味はないようなトーンである。
「ハイ❤前に津崎さんが゙瞬間瞬間を切り取る。その一瞬が好きだ ゙って言ってたじゃないですか。その時は漠然としか分からなかったけど、私も撮るようになってから、ああ、このことなんだな。って❤」
「そう。そんなふうに言って貰うと、嬉しいですね」
理由はなんであれ、興味を持ってくれることに悪い気はしない。
「きゃあッ…💕」
「…先輩、いつもそうなんだから。オトシたいオトコに合わせて」
「高坂さん💢今何か👊」
「いえ、何も😅」
「いいなぁ。マイも始めようかな💓そうしたら津崎さん、マイのカメラ選ぶの、付き合ってくれますかぁ?🎵」
「佐藤さんっ!」
「ヤダ。及川センパイ、こわーい」
「私のどこがよっ!」
「そーゆートコです」
(ああ…やっぱり………)
一人の男を挟んでのドア越しのバトルに、師長は大きくため息を吐いた。
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