一章 紅い雨

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  ■ ■ 時は戦国。 場所は武蔵。 後に、江戸と呼ばれるこの地は、今はドがつくほどの田舎。 辺境と言ってもいいほどだ。 立派なのは大名の城とその周りの豪商の邸宅くらいだと言っていいだろう。 そんな田舎でも、大名行列位は見れる。 たった一人の人間が籠(かご)に乗って移動するだけで、こんなにもたくさんの人間が動く必要があるのだろうか。 桐生雨月(きりゅううづき)に言わせれば、無駄だなぁと思うが、聡(さと)い従姉妹、薫(かおる)が言うには、 「大名としての威厳にも関わるからね。人をたくさん動かせるということで、権力の主張をしてるのよ。それ位悟りなさい、馬鹿」 薫のキツい一言に、どうせ俺は馬鹿さ。 と開き直るのはいつものこと。  
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