一章 紅い雨

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  いくらド田舎の、といえども大名は大名。庶民は庶民。 大名行列の行く手を塞ぐのは、かなり大罪だ。 いや大罪と言うか、敵と認識され、即刻斬り殺される。 例え相手が子供でも。 道の脇で手を地に着けて、大名行列一行に頭を下げている中、路地から子供が飛び出し、そして伏せるように身を低くしている人に躓(つまず)いてコテンと転ぶ。 大名行列の正面に。 後から急いでやって来た母親らしい女性が顔面蒼白になった。 「無礼なっ」 先頭の男が刀を抜きながら、ズンズン子供に近寄るのを見て、母親が子供を庇うように泣きじゃくる子供を抱き締める。 呪文のように、お許しをと繰り返すが、武士は取り合わずに刀を振り上げる。  
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